腫瘍科
現在ワンちゃんネコちゃんの死因トップは悪性腫瘍(がん)です。
実際、ペットの高齢化がすすむとともに、がんになってしまう子が年々増えています。
動物も人と同じで、早期発見・早期治療がとても重要ですが、実際には手遅れになってしまう子も少なくありません。
ここでは、具体的にがんとはどんな病気で、「早期発見のためにどうすれば良いのか」「どんな治療法があるのか」など、代表的な例をあげながら重要なポイントをあげました。
ぜひ皆様に読んでいただいて、今後の参考にしていただければと思います。
腫瘍とは?
腫瘍は、大きくわけて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」があります。
一般的によく言われる「がん」とは悪性腫瘍のことです。
ここでは主に悪性腫瘍である「がん」について説明します。
がんとは?
がんは、がん細胞が体の中で制限なく増え続ける病気です。
その急速な成長のため、動物の体からどんどん栄養を奪うので、動物はとても消耗します。
また、成長とともにがんは大きくなるため、周りの正常な臓器を圧迫し、その機能を妨げます。
更に進行すると全身に転移してしまい、多臓器不全やその他さまざまな合併症を起こし、
動物を死に至らしめることもある怖い病気です。
しかし、人と同様に獣医療も急速に進歩しており、
現在それぞれのがんに対して効果的な治療法が確立されてきています。
以下に代表的な腫瘍疾患を書きましたので参考にしてみてください。
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乳腺腫瘍
乳腺にできる腫瘍で、ワンちゃんでは50%の子が良性、残り50%の子が悪性といわれています。
一方ネコちゃんの場合、乳腺にできた腫瘍は80~90%の子が悪性です。
悪性度が高いものを放置しておくと、肺など他の臓器へ転移したり、腫瘍が細菌感染を起こし、
痛みを伴う可能性があります。
悪性のものでもしっかり切除すれば十分対応できる腫瘍です。
月に1回は自宅でも乳腺まわりを触っていただき、もし、しこり状のものがあれば診察でチェックしてあげましょう。 -
肥満細胞腫
ネコちゃんではあまり多くないですが、ワンちゃんでは皮膚にできる悪性腫瘍の中で一番多い腫瘍です。
肥満細胞腫のやっかいなところは、見た目が一般的な湿疹と同じように見えたり、
ただのイボのように見えたりすることもあることです。
そのため、つい様子を見てしまう時間が長くなりがちな腫瘍でもあります。
また、肥満細胞腫は、たくさんの炎症を引き起こす物質を出すため、
皮膚が赤くなったり、ひどい場合嘔吐や血便など消化器症状が出ることもあります。
皮膚に気になる症状があれば、早めの診察を受けてチェックしてあげましょう。 -
リンパ腫
血液のがんの1つで、リンパ球が腫瘍化してしまいます。
血液のがんなので全身に転移しやすい性質を持っています。
そのため、通常は手術や放射線治療ではなく、抗がん剤治療が選択されます。
早期に発見し、適切な治療を行えば、十分生活の質を高め、寿命を延ばすことが可能な腫瘍です。
症状は、体の表面のリンパ節が腫れてくるなどの典型的なものから、元気食欲の低下、嘔吐下痢など様々あります。
気になる症状があればなるべく早く診察を受けましょう。
治療に使用される機器
最高出力をおよそ3倍の5000mwにまで到達させ、主に小動物の悪性腫瘍を直接治癒することを目的とした特別仕様器です。
内部の構造は、Hyperthermia(温熱療法)の効果を最大限発揮させるための先端ソフトとハードで固められています。
光線温熱療法は、侵襲の少ない新たな悪性腫瘍治療法として、
外科的療法、化学療法、放射線療法に次ぐ弟4の療法としていま最も注目を集めています。
付属ユニットの装着により、通常診療に多い疼痛緩和、創傷治癒、
皮膚疾患などの幅広い症状に使用できるマルチタイプ治療器です。
早期発見のポイント
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体をさわる
皮膚の表面にできた腫瘍は、触るだけで簡単に発見できるものがたくさんあります。月に1~2回、全身の皮膚をよく見て、触ってあげてください。
特に毛が長いタイプの子はしこりがあっても見た目だけではすぐには気づきません。また、お口の中や耳の中もチェックできるようであれば、奥のほうまでしっかり見てあげましょう。
何かしこり状のものを見つけたり、気になる症状があればすぐに診察を受けてチェックしてあげましょう。 -
体重のチェック
腫瘍は動物の体から栄養を奪いながら成長するため、一般的に動物の体重が減っていくことがあります。元気や食欲があるからといって、体重が変わらないとは限りません。
月に2回ほど定期的に体重チェックを行い、ダイエットなどをしていないにも関わらず、体重が減るようであれば一度診察でチェックしてあげましょう。 -
その他
がんを患った子の症状は、多種多様です。ほとんど無症状のこともあれば、嘔吐や下痢など消化器症状、呼吸が荒い、咳をするなどの呼吸器症状、その他皮膚・神経・全身のリンパ節の腫れなど、ありとあらゆる場所にさまざまな症状が出てきます。
どんな些細なことでも気になることがあれば、一度診察を受けて、必要な検査をしてあげることが早期発見につながります。
がんの検査
一般的には細胞診検査・血液検査・レントゲン検査・超音波検査・その他特殊検査などさまざまな検査を組み合わせて診断していきます。
もちろんこれらの検査をすべての子に行うわけではなく、その子の状態や疑うがんの種類によっても検査の種類は変わっていきます。
なぜ検査が必要なのか、その結果どのようなことがわかるのか、さらに費用も含めて説明し、検査をすすめていきます。
最後に
「がん」という病気に立ち向かうには、色々な不安がつきものです。当院では飼い主様の不安を一つでも多く取り除くため、しっかりとした説明を心がけています。
どんながんの疑いがあり、それを診断するためにはどの検査が必要で、何がわかるのか。
さらに、必要な治療法や、全般にかかる費用、そして長期的な目でみたときの治療計画など、すべてをきちんと説明し、納得していただかなければ、がんという病気に真正面から立ち向かうことはできません。獣医師だけでなく、飼い主様の積極的な治療への参加と、自宅での愛情あるケアがなければ治療は成立しません。
万が一獣医師の説明でわかりづらいことや、お聞きになりたいことがあれば、どうぞ遠慮なくお聞きください。そして、一緒になって頑張っていきましょう。
動物たちの
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を
最優先に
がんが進行すると、
ひどい痛みや貧血など、
動物たちにとって非常につらい症状が
現れます。
当院では動物たちのQOLを
いかに維持するか、
またはより高いものに出来るように
心がけて治療を進めていきます。